安倍新内閣発足
「1億総活躍担当」の英訳が海外メディアで物議をかもす

 世界に情報発信するのであれば、日本語だけでなく英語に翻訳されたときのことも考えましょう。

 

10月8日のThe Wall Street Journalの記事の見出しに思わず目をとめました。

Lost in Translation: ‘100 Million’ Minister to Drive Abenomics 2.0
(失われた翻訳:「1億人」大臣がアベノミクス2.0を動かす)
ここでいうDriveは、走らせるという意味と、迷走させるということをかけているニュアンスを表現しています。

 

失われた翻訳

10月7日に第3次安倍内閣が発足されました。

加藤大臣が任命された「1億総活躍担当」。
日本語でも職務の内容が分りにくいという話を耳にしますが、英語ではそれ以上にどう翻訳するかについて議論されています。

大変僭越ではありますが、Lost in Translationとまで言われてしまった The Wall Street Journal の記事について
今日はブログを書かせていただきました。

 

一億総活躍担当大臣とはそもそも何をするところなのか?
少子化を食い止め、50年後も人口1億人を維持し、2020年までに国内総生産(GDP)600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロなどの実現を目指す政策。

新安倍内閣が掲げる「1億総活躍社会」を実現するための重要な職務です。

日本語でも職名を聞いただけでは何をする大臣なのか理解できないかと思います。
日本語でもわからないのであれば英名に翻訳すれば、さらに難しくなってしまうでしょう。

 

内閣府や各記事で発信されている英名をご紹介します。

「1億総活躍担当相」

内閣府公式ページ
Minister in Charge of Promoting Dynamic Engagement of All Citizens

毎日新聞
Minister to promote ’100 million active people‘

読売新聞(内閣府発信の公式名称を使用)
Promoting dynamic engagement of all citizens

ジャパン・タイムズ
Minister in charge of building a society in which all 100 million people can play an active role.

 

各記事の英訳を直訳してみます。

毎日新聞は「1億人のアクティブな人」を促進する大臣、読売新聞は全国民の精力的雇用促進大臣、ジャパン・タイムズは、冗長気味に「一億人全員が活躍できる役割を担う社会構築担当大臣」という感じでしょうか。
内閣府の公式名称と読売新聞でも使われている、Engagement を雇用と訳してみましたが、補足説明なしでは、抽象的で何を意味しているか分かりにくい印象があります。
(実際内閣府公式ページでは職務内容を補足する英訳が付記されています)

これだけを見ると職務が一番わかりやすい英訳はおそらく…ジャパン・タイムズの英訳でしょうか。
ただし、この長い英訳が記事に何回も出てきては、読み手は煩わしくてしょうがないですよね。
正式名称として使うには難しいかと思います。

ロイターでは、「1億総活躍社会」について「“an eerie echo of wartime propaganda,”(戦争時の宣伝のような恐ろしいぞっとするスローガンだ)」と指摘しています。 日本が、第二次世界大戦に掲げた1億人を死ぬまで敵と戦わせるというニュアンスに取れる、戦時スローガン「「一億」国民総員」を思い起こさせることが理由として挙げられていました。

本来の意図を伝えるどころか、海外のメディアではマイナスの印象を植え付けてしまっているようです。

 

何がいけなかったのか?
グローバルに情報を発信する際には、ネイティブ言語(日本の場合は日本語)と英語で、正しく理解されるようネーミングを考えることの重要性を考えさせられた記事です。

商品名、記事のタイトル、企業の組織名、全てのものが英語に翻訳されることを前提に日本語のネーミングを考え、そして同時に英語名を検討してください。
日本語と同じくらいの時間、いやそれ以上の時間をかけても惜しくないでしょう。

 

マーケティング理論でも、ネーミングは、それだけで無料の広告となる重要な要素とされています。

どれだけ中身が素晴らしい政策であっても、今回のように発信されてはマイナスからのスタートになってしまいます。

我々日本人がグローバルで活躍するために、すぐに取り組める意識改革の第一歩ではないでしょうか。

We tell your story to the world!!


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Mia Omatsuzawa 大松澤実絵

Chief Executive Officer (CEO)One World Link Inc.
英語のコミュニケーションにお悩みの方、私にご相談ください。真のコミュニケーションを、心と心のコミュニケーションの実現をご提供いたします。 担当記事:主に英語のコミュニケーション、ライティングについての記事を担当。また、価値あるグローバルな情報をいち早く日本語で皆様にお届けいたします。      mia@oneworldlink.jp  Facebook(Mia Omatsuzawa) 

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