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ここにもあった!日本のガラパゴス化

現在日本の上場企業では、「日本基準」「米国GAPP(基準)」「IFRS(国際財務報告基準)」という3つの会計基準が認められています。

これまでのBlogで我々日本人は言語や文化についても独自文化を大切に守って愛した結果、様々な局面でガラパゴス化してしまっている点にも触れて参りました。

会計基準においてもガラパゴス化は及んでおり、これは国際市場での比較可能性、資金調達手段の多様化を抑制している原因でもあると感じます。

日系企業では大企業のみがIFRSを適用すればいいという考えが多く、遅々として導入が進んでいない状況ですね。
日本政府は当初2015年前後のIFRS導入義務付けを予定していましたが、その2015年を目前に会計基準の扱いの方向性は定まっていない状況です。
IFRS導入のためのローカライズも何社かお手伝いさせていただいておりましたが、2011年頃を目途に縮小傾向になったことを記憶しています。

弊社では海外投資家向けのIR資料の英語版や中国語版の制作のお手伝いさせていただいておりますが、主旨は2つのパターンに分かれています。

1) 海外市場に上場しているため、英語版のアニュアルレポートの提出が必須である企業様
2) 海外市場に上場していないが、海外投資家向けのIRツールとして制作される企業様

1) のパターンでは、監査法人が米国GAPもしくはIFRSの基準に合わせて数値および科目の振替を行いますので、我々が深く関与することはあまりありません。
問題は2)のパターンです。米国GAAPやIFRSにはない日本独自の科目を翻訳する場合、とても苦労します。

金融庁が公表しているタクソノミには、日本の財務諸表の英訳がおおよそ掲載されています。
お客様からのご要望で、タクソノミの英訳を使用することがありますが、ネイティブが読んだとき、その科目が何を意図としているか理解できないことがあります。
http://www.fsa.go.jp/search/20130301.html
勘定科目リスト(EXCEL:3,146KB)

原因は、1)日本にしか存在しない科目であるから、2)注記の補足が不足しており諸表の中身が見えないから。主にこの二つでしょう。

新規の科目を英訳する際は最新の注意を払ってください。
解決方法としては、まず監査法人に相談をしてください。そして、科目の内容の十分な説明と合わせて財務知識のある、ネイティブの翻訳者に相談してください。
一度定訳となったものは、原則変更することは混乱を招くためできません。

安易に翻訳会社に依頼し、直訳してしまうケースが一番危険です。
海外投資家は常に数字を一番に見ています。極論を言えば、財務諸表しかみていない投資家も多くいます。

正しい科目の翻訳と、必要であればきちんとした注記を入れることで、海外投資家に正しい業績や財務内容の説明ができ、効果的にアピールすることができますよ!

ここで、あまり財務にお詳しくない方に、日本の会計基準には存在しない科目ついて一つだけご紹介!

◆有給休暇引当金
世界的に従業員の福利厚生の観点から有給休暇制度が普及されていますが、この制度に対する会計処理がIASと日本基準では大きく異なります。
日本基準では、有給休暇に関しては特に会計上は考慮することなく、給料の締め日において発生した月給を当該月の発生費用として認識しています。有給休暇の発生については、会計事象として捉えていません。
これに対して、IAS(米国GAAPも)では、有給休暇の発生については、会計事象と捉え費用認識することになります。つまり、将来における従業員の有給休暇の消化は、企業にとっては損失であり、その将来損失が当期以前に起因するものであれば、当期末において引当計上するという考え方です。
http://www.aap.or.jp/seviceLine/ifrs/kokusaikaikei08.html

その他にも、米国基準では、日本会計基準でいう「経常損益区分」というものは存在しません。

日本会計基準で営業外費用、特別損失に表示区分される項目のうち、事業に関するもの、例えば固定資産の 除売却損益等は、米国基準では営業費用に計上されます。従って米国基準に基づく営業利益は、 日本会計基準に基づく営業利益よりも少なくなります。

http://www.nsspirit-cashf.com/fs/bs_english.html

少しご紹介しただけでも、え!こんなに違うの、と思われませんでしたか?
これでは海外投資家が日本の財務諸表を見たところで、国際市場での比較検討することは非常に難しいですね。

企業様によっては、SEC(米国証券取引委員会)に上場していなくても米国GAPPの財務諸表を作成されている企業様もあります。
とても時間がかかることですが、素晴らしいと思います。

将来、グローバルに企業展開をお考えであれば、会計基準もグローバルスタンダードに!
元監査法人でのアカウントの知識を豊富にもつエリック・ジャクソンがいつでもご相談に乗ります。お気軽にご相談ください!
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Mia Omatsuzawa 大松澤実絵

Chief Executive Officer (CEO)One World Link Inc.
英語のコミュニケーションにお悩みの方、私にご相談ください。真のコミュニケーションを、心と心のコミュニケーションの実現をご提供いたします。 担当記事:主に英語のコミュニケーション、ライティングについての記事を担当。また、価値あるグローバルな情報をいち早く日本語で皆様にお届けいたします。      mia@oneworldlink.jp  Facebook(Mia Omatsuzawa) 
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